日本海事センターについて

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ご挨拶

四面を海で囲まれた日本では、輸出入貨物量の 99.6%を海上輸送が担っており、海運、造船などの海事産業は日本の経済・社会と国民生活を支える基幹産業であり、かつ、社会インフラです。同時に、日本の経済安全保障の最前線を担う極めて重要な産業です。

一方、近年海事産業を取り巻く国際情勢は流動化・不確実化の度合いを強め、また、世界的に海事分野の大きな変革期を迎える中で、日本の海事産業は迅速かつ的確な対応を求められています。

その一つは、国際海上輸送に関わるグローバルサプライチェーンの混乱への対応です。ロシアのウクライナへの軍事侵攻と黒海の戦闘地域化、紅海におけるフーシ派による商船への攻撃、さらにはパナマ運河の渇水に伴う一時的な通航制限など、日本商船隊の安定的な運航の確保が大きな課題となっています。

二つ目は、脱炭素化への対応です。国際海運の脱炭素化については、2050 年カーボンニュートラルに向けて、国際海事機関(IMO)においてGHG 削減に向けた中期対策の議論が最終局面を迎えており、一方、これに先行してEU においては、排出量取引制度(EU-ETS)が適用されるなど、地域規制が導入され、日本の海運企業もこれへの対応を余儀なくされています。また、造船業においても、CO2 ゼロエミッションを目指して次世代船舶の開発が急ピッチで進められています。

三つ目は、日本の海事産業の国際競争力の強化です。脱炭素技術に加え、自動運航船の実用化に向けた取組など、海事分野のイノベーションの動きが加速するとともに、洋上風力発電など新分野への展開も進みつつあり、一方で、これらの新しい展開に対応する計画的な海事人材の確保・育成が重要な課題となっています。

国内外において日本の海事産業が直面するこれらの重要課題について議論するため、2024 年 2 月に当センターが開催した第33 回海事立国フォーラム「海事産業の強化を展望する」において集約・共有された主要課題については、同年 12 月に、当センターの海運問題研究会の中に新たに「海事産業委員会」を設置し、産・官・学の関係者で議論をスタートしたところです。政策提言に向けて、今後精力的に議論を重ねてまいります。

日本海事センターは、海事分野の中核的な公益財団法人として、国内外の動向に的確に対応しつつ、日本の海事産業の振興を目的として、専門的な研究調査を行うとともに、産・官・学連携のプラットフォームの役割を果たし、さらに海事関係団体の公益活動に対する助成や海事図書館の運営などを行っています。

国際政治・経済情勢が流動化・不確実化する中、当センターとしては、今後とも、国際的な活動の充実を図りつつ、海事関係の諸課題を的確に把握し、海事産業界、行政当局及び教育・研究機関等との連携・協働を一層強化して、日本の海事産業の国際競争力の強化と経済安全保障への貢献、海事分野の公益事業の進展、海事思想の普及と海事の重要性についての社会・国民の理解の増進に努めてまいります。

当センターのこれらの取組及び活動に対する皆さまのご理解とご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。

2025年4月

公益財団法人日本海事センター 会長宿利 正史