第37回海事立国フォーラム in 東京 2026
「海事産業の再興に向けた将来展望」
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| 開催概要 | 2021年5月に「海事産業強化法」が制定され、海事産業基盤の維持・強化を図る取組みが進められてきました。一方、2022年2月のロシアによるウクライナ軍事侵攻、2023年のパナマ運河渇水による航行制限、2023年11月以降の中東情勢の悪化による喜望峰への迂回など、海事産業を取り巻く国際情勢は大きく変化し、海事産業はこれまで以上に厳しい状況下に置かれることとなりました。 こうした中、(公財)日本海事センターでは、2024年2月に海事産業の強化をテーマとした海事立国フォーラムを開催し、その結果を踏まえて、2024年12月に海事産業の競争力強化に向けた取り組みを議論する場として海事産業委員会を設置し、産官学による検討を進めてきました。 この検討過程で、2025年4月に米国通商法301条に基づく中国建造船舶等に対する入港料徴収措置の発表、日米関税交渉の一環として10月28日に金子国土交通大臣と米国ラトニック商務長官による「日米間の造船についての協力に関する覚書」への署名、経済安全保障等の観点から11月4日には「日本成長戦略本部」が設置され、「造船」が戦略分野の一つとなるなどの動きがあり、海事産業委員会ではこうした動きも踏まえ、現在、「海事産業の再興のための提言(仮)」を策定中です。 今回のフォーラムでは、この「提言」をご紹介するとともに、関係者の皆様との意見交換等を通じて、今後の海事産業の再興に向けた将来を展望します。 |
| 日時 | 2026年3月10日(火) 13:30 ~ 17:35 |
| 開催方法 | 実開催(YouTube配信あり)※YouTubeで視聴される方は申込は不要です。 |
| 開催場所 | 海運ビル 2階国際ホール (〒102-0093 東京都千代田区平河町2-6-4) |
| 主催 | 公益財団法人 日本海事センター |
| 後援 | 国土交通省 |
| 提言の概要 | |
| 開会挨拶 | |
| 来賓挨拶 |
![]() 国土交通事務次官 水嶋 智 氏 |
| 基調講演 | |
| 講演① | |
| 講演② | |
| 講演③ | |
| 講演④ | |
| パネルディスカッション |
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| パネルディスカッション(パネリスト) |
![]() パネリスト: |
| 閉会挨拶 |
登壇者 略歴

(公財)日本海事センター会長
宿利 正史
1974年3月東京大学法学部卒業。1974年4月に運輸省(現:国土交通省)に入省。運輸大臣秘書官、航空局審議官・監理部長・次長、大臣官房総括審議官、自動車交通局長、総合政策局長、大臣官房長 、国土交通審議官、事務次官を歴任。1984年から1987年まで在インドネシア日本国大使館一等書記官、1991年から1995年まで内閣法制局参事官を務めた。2013年8月から東京大学公共政策大学院客員教授(交通政策)、2014年4月から一般社団法人国際高速鉄道協会(IHRA)理事長、2018年6月から一般財団法人運輸総合研究所会長、
2021年6月から公益財団法人日本海事センター会長を務める。

国土交通事務次官
水嶋 智 氏
1986年4月 運輸省採用。2013年7月 国土交通省観光庁総務課長、2014年7月 国土交通省大臣官房総務課長、2015年7月 国土交通省大臣官房審議官(総合政策局、鉄道局担当)、2016年6月 国土交通省鉄道局次長、2017年7月 国土交通省観光庁次長、2018年7月 国土交通省海事局長、2019年7月 国土交通省鉄道局長、2020年7月 国土交通省大臣官房長、2021年1月(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構副理事長、2022年6月 国土交通省国土交通審議官、
2025年7月 国土交通事務次官(現職)。

(公財)日本海事センター海事産業委員会委員長
早稲田大学法学学術院教授 河野 真理子 氏
筑波大学社会科学系専任講師、助教授を経て、2004 年から早稲田大学法学学術院教授。交通政策審議会海事分科会長、港湾分科会委員等。「新しい国際コンテナ戦略港湾政策の進め方検討委員会」座長(2023年度から)及びカーボンニュートラルポートの形成に向けた有識者検討会委員(2021年度から)等も務めた。
2025年度の主要著作は、河野真理子「国連海洋法条約第15部の義務的裁判制度における第3節の役割に関する一考察」浅田正彦他編『国家と海洋の国際法』下巻6(信山社、2025年)

国土交通省海事局長
新垣 慶太 氏
1991年4月運輸省入省、2007年4月国土交通省近畿運輸局自動車交通部長、2011年10月国土交通省観光庁観光地域振興部観光資源課長、2014年7月国土交通省海事局内航課長、2016年6月国土交通省海上保安庁総務部主計管理官、2018年4月国土交通省航空局安全部安全企画課長、2019年7月海上保安庁総務部政務課長、2020年7月日本政策投資銀行常務執行役員、2022年7月国土交通省航空局次長、2023年6月新関西国際空港株式会社取締役副社長、
2025年7月国土交通省海事局長(現職)。

(一社)日本船主協会会長
長澤 仁志 氏
1980年 3月 神戸大学経済学部 卒業。1980年 4月 日本郵船株式会社 入社、
2004年 4月 LNGグループ長、2007年 4月経営委員、LNGグループ長 兼務
2008年10月 経営委員、LNGグループ長、海洋事業グループ長 兼務、
2009年 4月 常務経営委員、2011年 6月取締役・常務経営委員、
2013年 4月 代表取締役・専務経営委員、2018年 4月 代表取締役・副社長経営委員、2019年 6月 代表取締役社長、2023年 4月 取締役会長、
2025年 6月 一般社団法人日本船主協会会長 現在に至る。

(一社)日本造船工業会会長
檜垣 幸人 氏
1985年3月 慶應義塾大学 法学部 法律学科卒業。1985年4月 今治造船(株)入社、
1998年6月 同社 取締役 社長室長、2000年6月 同社 常務取締役、
2004年6月 同社 専務取締役 専務執行役員、2005年6月 同社 代表取締役専務取締役 専務執行役員、2005年10月 同社 代表取締役社長 社長執行役員 至現在。
2025年6月 一般社団法人日本造船工業会会長 至現在

日本内航海運組合総連合会会長
栗林 宏𠮷 氏
1982年3月 慶應義塾大学法学部卒。1982年 4月 栗林商船株式会社入社、1985年6月 栗林商船株式会社取締役、1989年6月 栗林商船株式会社常務取締役、1990年10月 栗林商船株式会社代表取締役専務、1992年6月 栗林商船株式会社代表取締役副社⾧、1995年6月 栗林商船株式会社代表取締役社⾧、2019年6月 日本内航海運組合総連合会会⾧。

(公財)日本海事センター海事産業委員会委員
神戸大学大学院准教授 石黒 一彦 氏
1994年東北大学工学部土木工学科卒業、1996年東北大学大学院情報科学研究科人間社会情報科学専攻博士前期課程修了、東北大学助手、神戸商船大学講師、神戸大学講師を経て、2009年より現職。博士(学術)。日本海運経済学会副会長・事務局長、日本交通学会評議員、ほか所属学会は土木学会、International Association of Maritime Economists (IAME)など。

(公財)日本海事センター理事長
平垣内 久隆
1985年東京大学法学部卒業。1985年運輸省(現:国土交通省)に入省。鹿児島県警察本部警務部長、(独)日本政府観光局米州統括事務所代表(ニューヨーク)、国土交通省大臣官房会計課長、航空局航空ネットワーク部長、大臣官房審議官(国際航空・空港コンセッション担当)、航空局次長、内閣官房内閣審議官(内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進事務局 統括官)、内閣府総合海洋政策推進事務局長を務めた。2021年10月に公益財団法人日本海事センター理事長に就任。
第37回海事立国フォーラム in 東京 2026の開催結果(概要)
第37回海事立国フォーラムin東京2026
結果概要
1.開催の概要
令和8年3月10日、東京都千代田区平河町海運ビル2階「国際ホール」において第37回海事立国フォーラムin東京を開催しました。
当日は、「海事産業の再興に向けた将来展望」と題して、会場で172名、YouTubeで187名と合わせて350名を超える参加をいただき、盛況裡の開催となりました。
2.講演内容
【開会挨拶】 (公財)日本海事センター 会長 宿利 正史
(別添資料参照)
【来賓あいさつ】
国土交通事務次官 水嶋智氏
水嶋次官から、以下の通りあいさつをいただきました。
・ペルシャ湾情勢が緊迫しており、国交省では関係省庁と連携・情報共有をしながら船舶の安全確保を図っている。日本の海事産業は、我が国の経済生活を支える重要産業であり、近年地政学的情勢が悪化しており、経済的安全保障の観点からも海事産業の重要性が高まっている。2010年代では米中貿易摩擦などはあったものの、現在ほど国際貿易システムそのものへの信頼が脅かされる事態ではなかった。現在は国際情勢の不安定化により世界の海運は大きな影響を受け、その余波が一般の生活にも影響が及んでおり、海事産業への認識の高まりも進んでいると思う。日本の造船業は中韓など周辺国とも激しい競争を行っており、市場の不確実性も高まっている中、将来にわたる安定的な事業環境の高まりが必要である。内航海運の持続可能性や、全産業での脱炭素なども課題となっている。海事産業強化法の締結以来、様々な取組みを国交省でも行ってきたが、内航海運では運賃策定の適切化、政府の成長戦略の枠組みの下での造船業への支援などを行っている。国会でも現在議論が行われているが、政府の成長戦略では造船・港湾ロジスティクス・海洋が重要分野として位置づけられており、我が国海事クラスター全体の強靭化につなげていく必要性を感じている。このようなタイミングで日本海事センターが政策提言を行うのは大変時宜を得たものと受け止めており、また海事関係者が多数お集まりいただいたことも意義深いと感じている。造船業の再興には安定的な鉄鋼の確保、クレーンメーカーとの関係性、株主・投資家の理解など様々な点が重要であるなど、海事関係者一同が声を合わせて情報発信力を強めていくことが重要と思う。提言に携わった全ての人に敬意を表すとともに、日本の海事産業の再興に繋げていくことを祈念したい。
【基調講演】「「日本の海事産業の再興に向けた提言」について」
(公財)日本海事センター海事産業委員会委員長・早稲田大学法学学術院教授 河野真理子氏
河野教授からは、以下の点を中心に「日本の海事産業の再興に向けた提言」について紹介が行われました。
①海事産業委員会の設立の背景について、日本社会における海事産業の重要性、日本の海事産業の問題、海事産業を取り巻く国際情勢の劇的な変化、海事分野における脱炭素への取組の必要性、トランプ政権への対応と日本の海事産業・港湾など
②日本の海事産業の現状と課題について、日本の海事産業の国際競争力、経済安全保障(現状・影響・リスク)、環境対応、地方創生(現状、リスク)など
③日本の主要な海事産業の現状と課題について、外航海運の現状と課題、内航海運の現状と課題、造船の現状と課題、舶用工業の現状と課題、海事産業全体の現状と課題など
④提言のポイントについて、民間事業者・国・地方公共団体のそれぞれが果たすべき役割と関係者間の協働・地方創生、人材の確保・育成、海事産業の重要性に関する国民の理解、経済安全保障等の観点の重要性、環境対応、海洋産業の振興、海洋産業群の強靭化による地方創生、海外との連携、主要海事産業(外航海運・内航海運・造船・舶用工業)など
【講演①】「提言の実現に向けた国土交通省の取り組み」
国土交通省大臣官房審議官(海事・港湾・危機管理) 足立基成氏
足立審議官からは、下記の点を中心に、国土交通省の取組みについて説明が行われました。
①造船業再生ロードマップについて、我が国造船業の重要性と造船業の特性、我が国造船業を取り巻く環境と現状・課題、我が国造船業の再生のための対応、各分野における課題と対応の方向性、船種・技術開発の切り口から見た戦略(勝ち筋)、造船業再生に向けたロードマップの要点、「官民投資1兆円」のフレームなど
②港湾ロジスティクスについて、成長戦略の検討体制、港湾ロジスティクス戦略など
③ゼロエミッション船の状況について、船舶分野のGXにおけるこれまでの取組状況、次世代船舶の受注拡大に向けた課題、新造船において選択される燃料仕様、新燃料の教育訓練に関する協議会の設置について、協議体における検討スケジュールなど
④外国人材の受入れ関係について、我が国における外国人材の受入れ(特定技能・育成就労における分野別運用方針の主要な記載事項)など
【講演②】「『提言』実現に向けた我が国外航海運業界からの期待~次世代に我が国海事産業群をつなぐために~」
(一社)日本船主協会会長 長澤仁志氏
長澤会長からは、下記の点を中心に、外航海運業界からの期待について説明が行われました。
①日本の外航海運の役割と現状について、海事産業群による我が国・地域の下支え、外航海運が果たす役割と現状、海運による我が国企業や地域経済への貢献など
②我が国外航海運が直面する課題について、我が国外航海運と国際競争環境の現状、トン数税制導入後の事業環境変化、イコールフッティングの重要性、我が国海運税制の維持・拡充の必要性、トン数税制改善の必要性、日本籍船制度の改革の必要、我が国海事産業群の強靭化、我が国海事産業を支える人材の確保・育成、海上輸送の様々なリスク、保護主義的措置による国際海上物流の阻害、ネットゼロに向けたグローバル規制、国際海運業界におけるカーボンニュートラル、洋上風力発電含む海洋資源開発への参画など
③「提言」への期待について、我が国海事産業群を未来に引き継ぐための前提・課題・具体的取組など
【講演③】「造船業再生強化 ~建造能力倍増に向けて~」
(一社)日本造船工業会会長 檜垣幸人氏
檜垣会長からは、下記の点を中心に、造船業の再生に向けた取組みについて説明が行われました。
①我が国造船業の現状について、日本における海事産業群の重要性、建造量の推移と新造船需要の見通し、日本造船業の優位性と課題、造船業再生に向けた政府の動きなど
②建造能力倍増に向けた取組について、設備の増強・改善、人材確保、省人化・生産性向上など
③今後の展望について、次世代船舶の開発・建造に向けた取組、造船業界における再編の進展、造船業の再生強化に向けた取組など
【講演④】「持続可能な内航輸送のために~海事産業委員会提言への期待~」
日本内航海運組合総連合会会長 栗林宏𠮷氏
栗林会長からは、下記の点を中心に、内航海運業界からの期待について説明が行われました。
①我が国内航海運の現状について、内航海運の社会的使命と現状、「船」および「人」の維持・確保の危機への直面など
②内航船および人の維持・確保に向けた取組みについて、状況・課題、内航船の設計の標準化、標準化普及に向けた政府の司令塔機能の必要性、標準化が内航海運にもたらすメリット、労働環境改善に向けた業界としての取組など
③その他の課題への対応と関係者との連携について、モーダルシフト、脱炭素化、コスト負担の共有など
④「日本の海事産業の再興に向けた提言」への期待について、提言が持つ意味と価値、内航海運業界からの期待、未来への決意など
【パネルディスカッション】
モデレーター:河野真理子氏
パネリスト:(公財)日本海事センター海事産業委員会委員・神戸大学大学院准教授 石黒 一彦氏
講演者4名
モデレーターの河野教授より、パネルディスカッションの趣旨等の説明が行われた後、まず当日発表された提言等について各パネリストからそれぞれ以下のコメントが行われました。
・長澤会長からのコメント
外航海運は平和産業であり、紛争多発状況を憂いている。大前提として、政府には船舶の安全航行の担保をお願いしたい。その前提のもと、世界単一市場で競争している外航海運としては、イコールフッティングが重要。イコールフッティングが実現されれば、外航海運は強力な日本の他の海事産業との連携により、他国の海運に負けることはないと思う。日本の造船業は世界全体でシェアは10%を切っており、応援したい。我々は7割以上の船舶を日本の造船所に発注している。日本の造船所が強くなれば、我々にもコスト面等メリットがある。海外の関税・保護主義的な動きも排除願いたい。日本人船員は1000人程度が船上で働いているが、減らさないよう、練習船の寄贈の実施など取り組みを行いたい。提言の内容を政策の中で展開いただき、次世代に引き継いでいただきたい。
・檜垣会長からのコメント
国が造船に注目し基金を頂いたが、これは重責を担ったということ。日本の造船業復活のため頑張っていきたい。設備など中韓との差はあるが、一人当たりの生産性や瀬戸内での鉄鋼業、関連メーカー等の産業集積など強みもある。ただ資機材費用の差の拡大や設備の老朽化、人員の減少など課題も多いが、設備の更新、人材の確保のための教育など、外国人人材の確保も含めて業界としての取組みを行っていきたい。今治では地方創生のもと、教育面では学校との連携の取組みも進んでいる。造船業界は業界が進んでいるが、一企業だけでは建造倍増のための設備投資は難しく、各企業がリプレースできるサポート体制づくりをお願いしたい。今回が造船業を再興させる最後のチャンスと思い頑張りたい。
・栗林会長からのコメント
内航海運は国内物流の担い手だが、日本経済の停滞等とともに、国内輸送量は漸減傾向にある。それに伴って船舶も人員も減少傾向にあるが、まだある程度の量はある。内航船の場合、標準船型が499トンと決まっており、スケールアップによる効率化に動きにくい部分もあるが、今回の提言を活かし、内航としては新しいチャンスになるのではないかと思う。人材をきちんと育てていき、年齢と資格のギャップを乗り越え、省力化・省人化を進展させ、国とのコミュニケーションも適宜行いつつ、業界を持続可能なものにしていきたい。
・石黒准教授からのコメント
ここ数年大きな出来事が頻繁に起こり海事産業群も振り回される状況が続いているが、長期の取組みも見据えた提言の取りまとめに携わった人々に感謝を申し上げたい。政府も含め、業界の枠を越えた連携が深まることに期待したい。
・足立審議官からのコメント
国際競争に圧倒的にさらされている業界であり、行政の役割が大切と感じた。税制と規制に関して、競争力や産業振興を阻害するものが残っているのであれば、しっかりと見直すことは必要。歴史が長い産業であるが、国際競争を戦えるように行政も取り組みを進めたい。イコールフッティングについて、財政当局側の論理もあると思うが、今回造船でブレイクスルーがあって基金が出来たように、こうした新しいことができないか、皆様とともに考えたい。産業振興に補助金を直接入れる手法は近年ではあまりとられていなかったが、追い風が吹いている中、海事産業全体のブレイクスルーを目指していきたい。
続いて石黒准教授と各パネリストの間で、造船にフォーカスした以下の質疑応答が行われました。
・長澤会長への質問
国際社会の中での様々なリスクが高まっていることに触れられていました。船主にとっては日本で船舶を調達し修繕を行う重要性が高まっているのではないかと拝察しますが、海運と造船との「協働」を今後さらにどのように深めて行くべきとお考えでしょうか。
・長澤会長からの回答
国際社会で様々なリスクが顕在化しているが、経済が政治の材料に使われだしていることを重視している。何か気に食わないことがあれば、経済を使って政治的な主張を行うといった動向が両大国に顕著にみられる。修繕の7割が中国に依存するなか、輸出規制などがあった場合にどうするか。日本の国で必要なものを作り、日本の会社が輸送を行わなければならない。造船は今後効率化を図っていくと思うが、修繕もフィリピンなど日本に親近感を抱く国やグローバルサウスを含めて展開していくことが必要。造船についても仕様を統一した発注やロットでの発注などにより、生産性の向上に貢献したい。次世代船の設計などではMILESにて既に行っているが、造船と海運の共同作業を進めていきたい。
・檜垣会長への質問
建造能力の倍増を実現するには、造船側の能力増強を進めるだけでなく、舶用機器や鋼材等のサプライヤーにも供給拡大に備えてもらう必要があると思われますが、安定的な供給体制の確立に向けて、造船側としてどのようにお考えでしょうか。
・檜垣会長からの回答
造船能力の強化が課題。韓国は広大な土地を保有して複数のドックを作り効率化をしている。日本の場合、面積が5分の1程度で人材も少ない。建造量倍増のためにはまず土地が必要で、例えば鉄鋼メーカーなどが規模を縮小した際、土地が余っていれば貸してほしいし、国も周旋して欲しい。土地の購入は基金の対象にはなっておらず、対象とすることや国や地方が土地を提供する仕組みなどがあればありがたい。また建造量を倍増するならば、舶用機器の生産も倍増されなければならず、相応の支援が必要と思う。舶用工業も設備の老朽化が課題であり、基金を用意いただくなど支援があると望ましい。また、クレーンもボトルネックであり、製造事業者は1-2社に限られており、納期は6-7年かかる。クレーンメーカーも基金の対象としてほしい。
・栗林会長への質問
内航船舶の標準化については、これまでも国が進めてきたところだと思いますが、今回の提言を受けて、実際にどう進めていくべきであるとお考えでしょうか。
・栗林会長からの回答
設計の標準化は、使いやすくて作りやすく、コスト競争力のある船を作ることが目的であり、これまでのあまりうまくいっていない取り組みも踏まえ、使いやすくて作りやすい船を突き詰めていくことが重要。標準化された船を安く作っていただければと思っており、現在それを目指して動いている人たちもいる。提言が受け入れられ、国が標準化のため施策を取られる際は、業界も積極的に動いていきたい。
・足立審議官への質問
中国・韓国は従前より政府が造船業に対して手厚い支援を行っています。競争力強化を目指すにあたり、支援の規模を競うことが現実的でないとすると、中国・韓国では手薄な分野や差の小さい分野を特に強化していくことが有効と考えますが、支援に当たっての対象の絞り込みの方針についてどのようにお考えでしょうか。
・足立審議官からの回答
中国は国営、韓国も財閥系大手造船企業に対し政府を挙げて支援した。自立性と優位性をキーワードにしていきたい。1兆円投資で自立性を確保するとともに、優位性の確保を目指して新しい船舶の開発をやっていく。日本はIMOに相当食い込んでおり、国際規則・基準をリードすることは国際競争力にもつながる。設計の標準化など協業もしっかりやったうえで、中韓に対する有効な手を打っていきたい。
続いて昨年12月の造船業再生ロードマップについて、造船のパネリストから外航海運のパネリストへ、また、外航海運のパネリストから造船のパネリストへ、それぞれ以下のコメントが行われました。
・檜垣会長からのコメント
造船基金の際にはご協力をいただき感謝申し上げる。次世代船舶の開発コストが厳しい状況のもと、開発コストを一部負担していただけるのはありがたい。ロット発注の実施や品質・サービスは世界一だと認識しているため、一定の船価差はジャパンプレミアとして発注を検討いただきたい。
・長澤会長からのコメント
海外も中国が独占に向かう状況には危機感を持っており、船価差は課題だが、建造量倍増のための生産性向上等を通じまずは一桁台のプレミアを目指していただきたい。日本の船主は日本造船所に発注したいという思いがあり、差が縮まれば、日本以外の船主からも発注が入るのではないかと思う。LNG船も含め、検討をしっかりやっていただきたい。
続いて内航海運業界における船員・船舶の維持確保について、パネリストから以下のコメントが行われました。
・栗林会長からのコメント
色々なコストが上がってきており、相応の運賃・用船料を頂く必要がある。運賃・用船料に関する標準的な考え方を検討しており、今の時代に合った運賃・用船料を頂いて、船主が船舶のリプレースができるようにしていきたい。国内の中小造船所にも手厚い支援をお願いしたい。人材に関し、海技教育機構等の卒業者はもちろん、陸上からの転職のケースも増えてきており、情報発信を続けながら間口を広げていきたい。船員養成機関の構造改革についても、インフレの時代を踏まえ、取り組みを進めていただきたい。
・石黒准教授からのコメント
内航WGでも深い議論を行った。船舶船員両方に課題を抱えており、業界での努力を進めても解決に至ってないことに理解を深めた。船舶のリプレースを進めるためにも運賃・用船料が重要。提言の検討にあたっては外航・内航いずれも重要という位置づけの提言になったと考えており、社会に対して内航について理解を深めてもらうきっかけになったのではと思う。内航に関する研究者は少なく、私も仲間を増やして研究を進めていきたい。
続いて今後の各業界の展望等について、パネリストから以下のコメントが行われました。
・長澤会長からのコメント
造船業の歴史を遡ると、かつては英国が1位だったが、フランス・スペイン・イタリアなどが台頭し、日本・韓国・中国へと首位が移っていった。英国では造船業の衰退とともに海運も消え、艦艇さえ作れなくなった。造船とともに日本の海事産業の復興が必要。日本は英国のようにトンネルで海外と繋がっているわけではない。政府が反応してくれたので、我々としても強い海事産業をしっかり繋いでいきたい。
・檜垣会長からのコメント
日本の電力の多くはLNGで作られている。LNGを運ぶ船が国内で作れないことには、造船業としても危機感を持っている。価格差を抑えるのも難しいが、LNGに関しては、造船業者が喜んで作れるような仕組みが必要。
・栗林会長からのコメント
内航海運は日本の経済状況と連動している。船体の整備や造船の能力など課題も多いが、内航は重要な役割を担い続けると思う。内航の抱える課題が残り続けているが、今回造船が注目されたことを契機に、内航にもいい機会として、業界が維持発展できるよう進んでいきたい。
続いて今後の海事行政等について、以下のコメントが行われました。
・足立審議官からのコメント
日本の海事産業は品質では世界一ということばも頂き、政策を担うものとして身の引き締まる思いだ。新時代の交通政策のあり方を検討しているが、海事・港湾を中心に、様々なご意見も頂いて、財政当局に出していく。小さくまとめようとしても上手くいかないことは分かっているので、他の役所とも連携して、大きな成果を目指していきたい。
その後、参加者からの事前質問について、以下の質疑応答が行われました。
・事前質問
海事産業強化法が制定され5年が経過、今年はその見直しや必要に応じて所要の措置が取られるタイミングかと思います。この5年間で成し遂げたこと、成し遂げられなかったことは何か。また、このタイミングで必要とされる所要の措置があれば伺いたい。
・足立審議官からの回答
海事産業強化法の見直しタイミングが来ているが、こうした状況の下での見直しであり、当時も税制特例などが盛り込まれたが、造船の能力は落ちている。造船能力の強化を海事産業強化法の改正の中に入れていくのではと考えている。イコールフッティングの話なども含め、大きな絵を描いて前に進んでいきたい。
最後に、フロアの日本舶用工業会・木下顧問から、以下のコメントがありました。
・木下顧問からのコメント
提言の中には舶用工業の課題も含まれているが、舶用工業は造船を支えており、設備の増強や事業の継承などに国の支援をいただき、今の規模を維持するとともに生産を向上させていきたい。仕様を統一いただく等していただければ納期は短縮できる。また海外から調達している部品もあるが、国内で内製化できるよう提言などを行っていきたい。
【閉会挨拶】 (公財)日本海事センター理事長 平垣内 久隆
(別添資料参照)
(注)以上の講演の結果概要につきましては、主催者側があくまで速報性を重視して作成したものですので、発言のニュアンス等を正確に再現できていない個所、あるいは重要な発言が欠落している箇所等がある可能性があります。
つきましては、発言の詳細や正確な発言を確認したい場合は必ずYouTubeを視聴してご確認いただくようお願いします。また、本結果概要の無断での転載等は控えていただくようお願いいたします。
(以上)











