JMC海事振興セミナー

Seminar

第2回JMC海事振興セミナー
「RCEP下とポストコロナの東アジア物流の展望」
を開催しました。

開催概要 コロナ禍において国際海上物流の混乱が長期化する中、東アジアを中心とした欧州・中央アジア・ASEANを結ぶ、海運と鉄道を組み合わせた国際複合一貫輸送が急速に発展しており、海運・物流の関係者等から大きな注目を集めています。
また、2022年1月1日、日中韓を含む広域的な経済圏を形成するRCEPが発効したほか、ブロックチェーン技術を活用した貿易書類の電子化・データ共有化の動きも進んでおり、東アジアを中心とした広域的な貿易活動が益々活発化することが予想されます。
このため、日本・韓国・中国関係の有識者・事業者を招いて、外航海運を中心とした複合一貫輸送の新たな展開と東アジア物流の将来について展望いたします。
日時 2022年6月15日(水)14:00~16:30
開催方法 オンライン(Zoom ウェビナー)
第2回JMC海事振興セミナー 全編 https://www.youtube.com/watch?v=Ifq-ymBSMuo
開会挨拶

(公財)日本海事センター会長 宿利 正史

開会挨拶

開会挨拶動画

ご講演

国土交通省公共交通・物流政策審議官 寺田 吉道 氏

講演資料

講演動画

略歴

ご講演

(公財)日本海事センター企画研究部客員研究員 福山 秀夫

講演資料

講演動画

略歴

ご講演

株式会社NX総合研究所リサーチフェロー 田阪 幹雄 氏

講演資料

講演動画

略歴

ご講演

九州産業大学商学部准教授 魏 鍾振 氏

講演資料

講演動画

略歴

ご講演

SITCインターモーダルジャパン社長 呂 開献 氏

講演資料

講演動画

略歴

パネリスト
質疑応答

モデレーター: 神戸大学大学院海事科学研究科准教授 石黒 一彦 氏

講演動画

略歴

総括コメント

九州国際大学現代ビジネス学部教授 男澤 智治 氏

講演資料

コメント動画

略歴

視聴者様
質疑応答
閉会のご挨拶

(公財)日本海事センター 常務理事 下野元也

閉会挨拶

閉会挨拶動画

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第2回JMC海事振興セミナーの開催結果(概要)

1.開催の概要

令和4年6月15日、東京都千代田区麹町の海事センタービル4階会議室において、第2回JMC海事振興セミナーを開催いたしました。
当日は、「RCEP下とポストコロナの東アジア物流の展望」と題して、ZOOMを活用したオンラインセミナーを行いました。
多くの視聴者から参加登録をいただき、盛況裏に開催することができました。

2.講演内容

(1)特別講演:国土交通省公共交通・物流政策審議官 寺田吉道 様
「東アジア物流に関する国土交通省の取組」

国際物流における東アジアの重要性、総合物流施策大綱、日中韓物流大臣会合に基づく取組、日ASEAN交通連携に基づく取組、について紹介いただいた上で、東アジア物流における昨今の課題について報告をいただきました。

(2)基調講演:日本海事センター客員研究員 福山秀夫
「東アジア国際物流の動向と展望について-国際複合一貫輸送の視点から-」

コロナ禍の世界的な海上コンテナ輸送の大混乱を受けて、SLB・中欧班列が急成長した一方、RCEPが本年1月1日に発効し、東アジアの貿易量増大が期待されている。また、ポストコロナに向けて、東アジア物流の変化に対応した域内物流と域内・域外の連携物流におけるサプライチェーンの再構築が起こることが予想されており、このため、国際複合一貫輸送体制の整備や海運・港湾・物流の貿易手続き等DXの推進、さらには日中韓アセアンの相互協力体制が必要であると考える、との紹介がなされました。

(3)シンポジウム
a)NX総合研究所リサーチフェロー 田阪幹雄 様
「東アジア物流における日本企業の取り組みと課題」

日本の物流企業の海外進出、日本~東アジアの貨物輸送、物流事業展開の現状と推移を分析して紹介。その後、日本物流企業の旺盛な東アジアへの進出にも拘わらず、日本物流企業のシェアは伸びていない。この原因と考えられるのは「生産性の低さ」であり、日本企業が乗り越えなければならない課題であり、今後は物流の標準化・デジタル化が求められる、との見解が述べられました。

b)九州産業大学准教授  魏鍾振 様
「韓国の国際物流への取り組みと課題」

韓国における国際貿易の動向を分析し、韓国の近海物流とシームレス化の取り組みの現状として、北東アジアにおける「国際高速船航路のネットワーク」と「シャーシの相互通行」を取り上げ、また、TSR(シベリア鉄道輸送)とTCR(中欧班列)の2つの「ユーラシア横断鉄道」の活用に向けた韓国政府の戦略や利用促進政策などを取り上げて、解説がなされました。

c)SITCインターモーダルジャパン社長 呂開献 様
「東アジア物流の課題へのSITCグループの取組み-RCEPのSITCの発展に対する機会と挑戦-」

SITCグループは、民営では中国最大の海運グループである。その海運戦略と物流発展戦略について元SITCジャパン(海運会社)の呂開献社長が解説されました。SITCの海陸一体化したコンテナ輸送ネットワーク、特に、欽州港を重視した海陸一体のサービスを提供している。このほか、コンテナヤード・倉庫・コンテナターミナルなどの運営管理、大型貨物輸送、液体パッケージ輸送、スチールコイルボックス輸送・越境ECサービス等を行っている。中欧班列などを利用するSEA&RAIL輸送も行っている、との紹介がなされました。

d)モデレーター:神戸大学大学院准教授 石黒一彦 様

1)田阪リサーチフェローへの質問と回答
「東アジアに進出している企業の成功・失敗・課題などに関する見解を伺いたい」との質問があり、「日本の物流企業は荷主企業の個別の需要に基づき、個別最適化したサービスを提供しており、これが日本企業の特色としてある」との回答がなされました。

2)魏准教授への質問と回答
「ユーラシア横断鉄道の需要の急拡大により、韓国では何がどのように改善されると見込まれているか」との質問があり、「韓国では新北方政策を推進しており、韓国企業専用枠の確保などの取組を行っている。これにより韓国発ヨーロッパ向けの貨物輸送の安定性が高まり、ユーラシア横断鉄道の需要拡大に貢献している」との回答がありました。

3)呂社長への質問と回答
「欽州港を拠点として海運と鉄道の一貫輸送について、今後のポテンシャルが大きいと思われるが、今後の見通しはどうか」との質問があり、「欽州港は鉄道の引き込み線が岸壁まで延び、内陸から鉄道貨物の輸出への接続が一層便利になったので、鉄道の輸送ニーズがものすごいスピードで伸びています。今後も主要ルートとなる見込みです」との回答がありました。

(4)コメンテーター:九州国際大学教授 男澤智治 様
「RCEP下とポストコロナの東アジア物流の展望-総括コメント-」

RCEPとは何かについて述べられた後、RCEP下での中国の動きとして、

  • ①中国とシンガポールとの連携
  • ②ASEANとの新たなルート構築(西部陸海新通道)、
  • ③新通道下での欽州港・鉄道コンテナセンター駅の連携によるRAIL&SEA輸送、
  • ④中国とASEAN・中越・中老との鉄道連携輸送

について説明された後、日中韓の企業についての3名の講演者の要旨が述べられました。
最後に「東アジア物流の展望」として、

  • ①ポストコロナとRCEPが同時に進行しているなかで東アジア物流が大きく変化するとの想定から欧州向け物流とアジア域内のサプライチェーンの再構築が起こる。
  • ②企業の競争だけでは実現には困難を伴うことが予想され、日中韓アセアンの協力体制が必要になる。
  • ③中国とASEANの物流が中欧班列により、中央アジアや欧州へと繋がる新たなルートも構築されており、ますます域内物流と域外物流が重層的に行われるものと予想される。
  • ④さらに、日韓発貨物とASEAN発貨物を重慶や成都に集約し、中央アジアや欧州に輸送することも可能となる。

このように、日中韓のフォワーダーや船社にとっては、大きなビジネスチャンスであるが、円滑な物流を実行するためには相互協力体制が欠かせない。一方で、日本企業の労働生産性の低さは、今後の日本企業の発展の足かせになる。これらについては物流施策大綱でも重要施策として取り上げられているDX等の対応が重要なカギとなると思われる、との要約がなされました。

(5)視聴者からの質問と回答

視聴者からの質問を受け付けた上で、

  • ①アジア・ASEANでは、物流インフラの規格統一と物流関連の手続き等の標準化が望まれるのではないか。
  • ②サムスンが鉄道で欧州への輸送を効率化したとのことだが、サムスンやLGなどはロシアのウクライナ侵攻開始以降変化があるか。
  • ③東アジアを中心に配船しているSITCの立場で、日本市場の現状及び今後の見通し・位置づけなど、どのように評価しているか。

との3つの質問を取り上げて各講演者に伺った結果、講演者から次の通りの回答がありました。

  • ①田阪リサーチフェロー
    東アジアはEUのような統一市場になっていないので、物流インフラの規格統一、手続きの標準化は必要不可欠。例えば、米国メーカーなどでは、中国、ASEANに委託生産している場合、パレタイズされたものが米国の物流センターまでリ・パレタイズされないで届く米国スタンダードが出てきている。欧米の企業中心に標準化は進んでいるが、日本物流企業のシェアは伸びていない。国交省から紹介のあったコールドチェーンの日本式の標準化については、スタンダードになればよいと思うが、それが難しい場合は欧米スタンダードに沿って行くスタンスも必要と考える。
  • ②魏准教授
    サムスンが輸出していた半導体は制裁対象なので現在輸出していない。半導体以外の品目については今でもロシア国内向けのものはSLBを利用している。ロシア以外の欧州の国への輸送については、SLBがロシアから先の欧州向けには寸断されているので海上輸送に切り替えている。SLBの貨物量は圧倒的に減少している。
  • ③呂社長
    今年は、SITCが日本への航路サービスを開始して30年たった節目の年。日本市場は、企業の発展に非常に重要な役割を果たしている。RCEP、ポストコロナ下の時代の趨勢に合わせて、一物流企業とし日本市場を重視して発展していきたい。

なお、この概要は事務局の責任で編集しているものであり、発言の取り上げの不足やニュアンスの違い等がある場合がありますので、正確な内容については必ず画像と音声をご確認頂くようにお願いします。